性格の不一致

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性格の不一致

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夫婦関係が悪化した原因としてよく挙げられるのが、配偶者の人間性や性格の違いに基づく”性格の不一致”の問題です。

離婚を考える方の多くは配偶者の人間性に疑問を持つものですが、現実的にはこの「人間性」どのように考え、対処していくべきなのでしょう。

ここでは、私が現実の離婚に携わってきた経験を踏まえ、夫婦の人間性や性格の違いから生じる「性格の不一致」の問題について検討していきます。

「性格の不一致」と「価値観の相違」の違い

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性格の不一致は「価値観の相違」との混同しがちですので、この違いから説明していきましょう。まず性格は「行動の仕方に現れるその人固有の感情・意志の傾向(その人が元々持っている性分)」です。

これに対して価値観は「何が大事で何が大事でないかの判断、物事の優先順位づけ」を意味します。

たとえば「敏感」や「鈍感」は元々の性格ですが「何よりもお金が儲かる仕事をしたい」「人に奉仕する仕事がしたい」というのは”判断に基づく優先順位づけ”なので価値観です。

  • 性格
    行動の仕方に現れるその人固有の感情・意志の傾向(その人が元々持っている性分)
    (例)敏感・鈍感
  • 価値観
    何が大事で何が大事でないかの判断、物事の優先順位づけ
    (例)「何よりもお金が儲かる仕事をしたい」「人に奉仕する仕事がしたい」など

性格の不一致は「性格が相違すること」と考えられがちですが、正確には「相性が合わないこと」を意味しますので「相性の不一致」と言った方がいうべきものかもしれません。

性格の不一致→相性の不一致

ですから「性格が全く同じでも相性は合わない」こともありますし「性格が正反対でも相性は合う」ということもあり得る、ということです。

性格が合うと感じるかどうかは、性格の捉え方や考え方によるところが大きい

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たとえば「臆病な性格の妻を勇敢な性格の夫が支えている」という場合、妻が夫に感謝し、夫も妻の感謝を喜ばしく思えたら、おそらくお互い「性格が合う」と思うでしょう。

しかし、妻が「夫がいると自分は成長できない」と思い、夫が臆病な妻を「情けない」と思っていたら、お互い「性格が会わない」と感じるはずです。

このように、性格が合うと感じるかどうかは、他人の性格の捉え方や考え方によって大きく変わります。他人の性格を肯定的に捉えたら性格が合うと感じ、否定的に捉えたら性格が合わないと感じる、ということです。

ただ、捉え方を変えるのは簡単なことではありません。肯定的に捉えた方が良いと理屈では分かっていても、生来の臆病な性格は無意識のうちに否定的な感情を呼び起こしたりするものです。

こんなとき「捉え方を変えなければ!」という意識が強過ぎると、思い通りにならなかったときに自分を責めたり他人のせいにしたりと様々な弊害が出てきます。

ですから、どうしても捉え方を変えられないときは反対に「簡単に捉え方は変えられない!」といったんあきらめて、目の前の厳しい現実から自分を一時解放してあげるのも一つの手ですう。大切なのはバランスです。

「捉え方を変える!」と「変えられなくてもいい!」という相反する考え方のバランスをとる、ということです。

言葉では「捉え方は変えられない」と言いながら、少しずつ良い考え方に近づけていくような調整方の方がしっくりくる人もいますので、一つのやり方に固執しないよう心掛けましょう。

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限界値は本人にしか分からない

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どれだけ捉え方を変えようとしても調整ができずに本人の我慢が限界に達しているようなら・・・残念ですが離婚もやむを得ないかもしれません。

浮気や暴力などの明確な離婚原因が無いと、多くの関係者は離婚に反対すると思いますが、私は離婚のリスクをお伝えした上で、ご本人の意思を尊重することにしています。

なぜなら、いくら周りの人間が「多少の価値観の相違で離婚すべきではない」と思っても、本当に婚姻関係の継続が本人の幸せに繋がるかどうかは誰にも分からないことですし、我慢の限界値も本人にしか分からないからです。

周りの人間は、いくら本人から話を聞いたところで、夫婦の微妙な雰囲気・心境・詳しい過去までは分からないのに、つい全てを悟ったかのように「安易に離婚すべきではない」などと言いがちです。

しかし、多くの方はずっと耐えて、改善方法を考えて、そしてまた耐えて・・・を繰り返しているので、私が話を聞いていく中で

「今までよく頑張りましたね」

と言うと、それまで苦しんできた過去が思い返されるのか、思わず瞳から涙が溢れ出てしまう方がたくさんいらっしゃいます。

その涙は、周りの人間が考える以上に本人が悩み、苦しんできた証ではないでしょうか。周りの人間には、当事者が語る「性格の不一致」の真相を理解するのは難しいところがあります。

結局離婚すべきかどうかは当事者の「生き方」の問題ですから、周りの人間は、その生き方を尊重した上で、謙虚な姿勢で関わるべきだと私は思います。

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価値観とは「個人が最も大事にしたい夢や理念」「理想とする世界観」のようなもの

統計での離婚原因の第1位は男女共に「性格が合わない」ですが、厳密には「価値観の合わない」が大多数を占めていると思われます。ここでは、価値観の相違がどのような形で夫婦関係に影響するのかを考えていきましょう。

性格は、敏感とか鈍感のような「その人が元々持っている性分」なので、性格の不一致は、その捉え方さえ肯定的に変えられたら、比較的容易に関係の改善が図れます。しかし、価値観の相違の改善はそう簡単にいくものではありません。

価値観は、いわば「個人が最も大事にしたい夢や理念」、言い換えれば「理想とする世界観」のようなものなので、誰しもそう簡単に変えられるものではありません。

  • 性格の不一致
    捉え方さえ肯定的に変えられたら、比較的容易に関係の改善が図れる
  • 価値観の相違
    個人が最も大事にしたい夢や理念、言い換えれば「理想とする世界観」のようなものなので、簡単に変えられれない。

最初から理想とする世界観が同じならいいですが、異なる場合はどちらかが理想とする価値観を諦めなければならない場合も出てきます。

たとえば、子供の教育について、夫は「上下関係を学べるスポーツに力を入れるべき!」と考えるのに対し、妻が「勉強が一番大事!スポーツなど時間の無駄!」と考えていたとしたら、どちらか一方が理想とする教育方針を諦めなければならなくなるでしょう。

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価値観は、夫婦関係・親子関係・親族関係・友人関係などの人間関係の考え方、仕事と家事の考え方、休日の過ごし方、本物志向の程度など数多くありますが、その全ての価値観を共有するのは現実的に不可能です。

しかし、お互いが特に重要と考えている両立の困難な価値観については、じっくり話し合った上で、結論を出さなければなりません。

たとえば前述の教育方針でどちらか一方が譲歩すれば問題ありませんが、どちらも譲らないなら話し合いで結論を出さなければなりません。

こんな時、良い解決に辿り着けるかどうかは、お互いが相手の価値観を認められるかどうかにかかってきます。

お互いが相手の考えに相応の価値を認めて尊敬し合えるなら、両者の考えの長所を生かした素晴らしい結論に辿り着く可能性は格段にアップできるでしょう。

しかし、前述の妻のように「スポーツは時間の無駄!」などと自分の価値観が絶対的なものと信じ込み、配偶者の価値観を完全に否定するようなことをしていたら、良好な人間関係の構築は難しくなるでしょう。

他人の価値観を尊重せず、無意識に誹謗中傷していませんか?

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他人の価値観を認めることの大切さを表面的な言葉では知っていても、現実的な意味を理解した上で実践できているような人はほんの一握りではないでしょうか。私たちは、気付かないうちに他人の価値観を非難し、傷つけていたりするものです。

日本では思想の自由が憲法上も認められているのですから、特別な事情がない限り、誰でも自由な価値観を持つ権利があるはずです。

しかし大多数の人は、自分が他人の価値観を正当な理由もなく非難していたとしても、権利侵害を意識することはまずありません。

たとえば、ボクシングが嫌いな人が「ボクシングが嫌い」という価値観を持つまでは構わないのですが、ボクシングが好きな人の価値観を誹謗中傷するのはいかがなものでしょう。

「ボクシング好きの人は野蛮だ」「乱暴者が集まる競技だ!」「ボクシングをやる人間は馬鹿が多いから、見る奴も馬鹿が多い!」などと、言われた人の気持ちも考えないまま、他人の価値観を非難する光景は、身の回りでもよく見受けられます。

「誰でも表現の自由(言論の自由)が認められているはず!」といった反論も受けそうですが、表現の自由を認める憲法は、正当な理由もなく他人の価値観を誹謗中傷することまで認めているわけではありません。

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言う方には「些細な言葉」でも、価値観を非難された側の人間はその些細な言葉で深く傷ついていたりするものです。もしも自分が同じようなことを言われたらどう思うか、一度相手の身になって考えてみましょう。

「自分は同じことを言われても何とも思わない!」という言う人もいるでしょう。しかし「相手の身になって考える」とは、自分が相手の立場に立つことではなく「性格も感情も全て相手になったと仮定して考える」ということです

これができれば「自分は傷つかないが相手は傷つくかもしれない」という、相手に配慮できる感情や対応が生まれてくるかもしれません。

価値観の相違は極めて難しい問題ですが、当事者が自分と異なる相手方の価値観を認め、尊重することができたなら、価値観の相違に関する大多数の問題は円満に解決するはずだと私は思います。

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「言わないと伝わらない」を原則にする

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お互いの価値観に関しては、納得いくまで話し合った方がいいでしょう。婚姻生活を続けていると「配偶者のことは何でも知っている」と思い込みがちです。しかし実際は、配偶者の理解が不十分なケースがほとんどです。

たとえば、妻が「10回目の結婚記念日くらい二人だけで食事に行きたいね」と言っても、夫が妻の気持ちの”重み”を理解せずにやり過ごしたら、妻の不満は増幅するでしょう。

こんなときはつい「気持ちを理解してくれない!」と相手を非難しがちですが、いくら相手を非難をしても本質的な解決には至りません。だからここは「自分の思い(希望)はハッキリ言わないと伝わらない」と考えを改めましょう。

世の中には少しの言葉で理解する人もいれば、多くの言葉で伝えなければ分からない人もいます。「普通はこれだけ言えば分かるはず」と思ったところで、思いを伝える相手は目の前の人間ですから、その人が理解できる形で伝えなければ意味がありません。

自分も相手の思い(要望)に全部応えているわけではない

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「口に出さないと分かってもらえないのか・・・」と思うと、配偶者の不誠実さや能力のなさを感じてショックを受けるかもしれません。しかし、ここで一度「自分は相手の思いを理解している?」と自分に問いかけてみましょう。

相手も口には出さないけれど「配偶者には~して欲しい」という、理想とする配偶者の姿があるはずです。たとえば配偶者が以下のような思い(希望)を持っていた場合を考えてみてください。

  • 外も家でも身だしなみを整えて欲しい
  • 口うるさく言わないで欲しい
  • 些細なことで怒らないで欲しい
  • いつも笑顔でいて欲しい
  • 笑顔で挨拶をして欲しい

さて、これらはほんの一例ですが、こういった配偶者の潜在的な思い(要望)を正確に理解している人はどれだけいるでしょう。

「”理解している”とは行動が伴って初めて言える言葉」と考えると、配偶者の思い(希望)の全てに応えられている人は、ほとんどいないことが分かりますよね。

「言わなくても理解して欲しいけど、
自分も言われないと理解できない
ことはあるからお互い様かな。」

という謙虚さを持てたら、配偶者への不満も解消されるのではないでしょうか。

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